コラム
修行日記③ 鹿青との格闘

修行三日目。
今日は泰山タイルの「釉薬」の勉強でした。
今回挑戦したのは、泰山釉薬の中でも特に難しいといわれる色 ―― 鹿青(しかあお)。
その名は、釉薬の結晶が鹿の毛皮の斑点のように見えることからつけられたものだそうです。

辰砂(しんしゃ)に次いで色が出にくいとされるこの釉薬は、泰山の色彩世界の奥深さを象徴する存在でもあります。
前回の釉塗りをさせていただいたタイルを本焼きのトンネル窯で焼いていただいた結果を先生と検証する時間。
焼き上がりを光にかざし、色の出具合を一枚一枚確認する。
けれど今回は、残念ながらほとんどが「狙い通り」とはいきませんでした。
釉薬が濁り、想定した発色が現れない。
試験焼きとしては「失敗」と言わざるを得ない結果でした。
ただ、不思議と悔しさよりも面白さが勝るのです。
なぜこうなったのか。
炎と釉薬、土と窯の条件の組み合わせをどう変えればよいのか。
先生の考察を聞きながら、「理想」と「現実」の差分を見極める時間。
その試行錯誤のプロセスこそが、泰山を自分の身体に刻み込む修行の一部だと感じました。

さらに工房では、先生が作りかけの作品を前に、思いがけない問いを投げかけられます。
「ここに入れる色を、君ならどう選ぶ?」
ひゃー、これは痺れる質問。
恐る恐るピースを置きながら、自分の考えを言葉にしていく。
けれど実際に置いてみると、イメージと違う。
思い通りにいかないもどかしさ。
何度も置き直し、試し、迷いながら進めていくうちに、当初の正解を求める気持ちは消えていきました。
タイルの色や形に導かれながら、その場でしか生まれない表現を探す。
「正解のない世界でもがく」ことの尊さ。
このかけがえのない時間こそ、今の自分に必要なのだと、改めて強く感じた一日でした。
